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マルヰコラム

COLUMN

生分解性プラスチック

2024年4月16日

生分解性プラスチックの歴史をたどる|PLAを用いた不織布製品開発に向けて

生分解性プラスチックの歴史をたどる|PLAを用いた不織布製品開発に向けて

生分解性プラスチックの歴史は、環境意識の高まりと技術革新の両輪によって切り拓かれてきました。

この記事では、生分解性プラスチックの発見から現在までの歴史を詳しく解説しています。

また、私たちマルヰ産業の生分解性プラスチックを用いた不織布開発の歴史についてもお伝えするので、その中で当社の持続可能な製品の提供を目指す姿勢を知っていただけたらと思います。

生分解性プラスチックとは

生分解性プラスチックは、通常のプラスチックとは異なり、自然界で微生物の働きによって分解されやすい素材で作られたプラスチックです。

通常のプラスチックは数百年から数千年かかる時間を要して分解されるため、土壌や海洋に蓄積されると野生生物の生息地を侵害したり生態系に悪影響を与えたりする問題が生じています。

一方、生分解性プラスチックは比較的短い期間で分解されるため、土地や海洋に残留するプラスチックの量が減少し、自然環境保護に貢献できる素材として期待されています。

しかし、生分解性プラスチックは、土壌、淡水、海洋などの全ての環境下で速やかに分解されるわけではないため、適切な処理方法や環境下での使用が重要であると言えます。

生分解性プラスチックとは

生分解性プラスチックの歴史

ここから、生分解性プラスチックが誕生した歴史について解説します。

生分解性プラスチックの先駆け:PHAの発見

生分解性プラスチックの歴史は、1925年にさかのぼります。フランスのパスツール研究所のLemoigne博士が、微生物がオイルや糖類などの炭化水素を利用してポリマーを生産する能力を発見しました。

その微生物によって生産されるのが、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)という生分解性ポリエステルです。この発見が生分解性プラスチックの先駆けとなりました。

生分解性プラスチックの礎:P(3HB)の大量合成法の発見

その後、1958年にWilliamsonが、微生物を使用して、PHAの一種であるポリβ-ヒドロキシ酪酸(P(3HB))を大量に発酵合成する方法を発見しました。

P(3HB)は、生分解性プラスチックの主要な成分の1つであり、自然界において微生物によって合成されるバイオポリマーです。この研究が、生分解性プラスチックの研究や応用の発展に大きく貢献しました。

生分解性プラスチックの進化:P(3HB/3HV)の大量生産

1980年代に入り、環境問題への関心が高まる中、生分解性プラスチックの研究が活発化しました。

1980年にイギリスのICI社が、P(3HB)にポリ3ヒドロキシバレレート(P(3HV))を共重合した材料P(3HB/3HV)の大量生産に成功。この開発により、従来のP(3HB)よりも柔軟性や強度が向上し、より実用的なP(3HB/3HV)が生分解性プラスチックの材料となりました。

生分解性プラスチック研究開発の加速:新しいポリマーの開発

1990年代には、P(3HB/3HV)の他にも、さまざまな生分解性ポリマーが開発されました。例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリアルキレンカーボネート(PCC)、ポリブチレンセバクテート(PBS)などです。これらのポリマーはさまざまな原料から製造され、異なる性質や用途を持っています。

これによって、生分解性プラスチックは包装材料、農業資材、医療機器、食品容器など、さまざまな産業に応用されるようになりました。特に、環境への配慮が求められる食品包装や一次包装などでの利用が増加しました。

生分解性プラスチックの革新:バイオマス由来素材の誕生

2000年代以降、生分解性プラスチックの研究開発はさらに進展し、さまざまなバイオマス由来の素材を利用した新しい生分解性プラスチックが開発されました。

生分解性を持つプラスチック製品は環境中で自然に分解されるため廃棄物の蓄積や環境への負荷を軽減しますが、特にバイオマス由来の生分解性プラスチックは、化石燃料由来のプラスチックよりも環境への影響が少ないと考えられています。

マルヰ産業の生分解性プラスチックの歴史

マルヰ産業の生分解性プラスチックの歴史

私たちマルヰ産業の不織布製造は長い歴史がありますが、2021年から、環境負荷の低減を目指した取り組みの一環として、PLA(ポリ乳酸)繊維を活用した不織布の開発に着手しました。

この取り組みのきっかけは、環境に配慮した製品の開発を模索していた中で、環境省のバイオプラスチック導入のロードマップを発見したことです。

環境省の報告書に示された導入目標は、

  • 2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入
  • バイオマスプラスチック類(バイオマスプラスチック以外のバイオマス代替素材を含む)の導入により、2030年に209万トンの非エネルギー起源二酸化炭素の排出削減

であり、これが我々の環境にやさしい製品開発の重要性を再確認する契機となりました。

さらに、プラスチック製品領域別バイオプラスチック導入方針によれば、以下の製品領域は生分解性プラスチックが適しているということでした。

  • 堆肥化・バイオガス化等に用いる生ごみ用収集袋
  • 農業用マルチフィルム(農地の土壌にすき込む場合)
  • 肥料に用いる被覆材
  • 漁具等水産用生産資材(必ずしも高い強度や耐久性が求められない場合)

不織布は上記の製品に幅広く使用されるため、その不織布が生分解性を持てば環境に対する負荷を最小限に抑えることができると感じて研究開発を進めることにしました。

新たな歴史へ:生分解性プラスチックを用いた不織布の展望

生分解性を持つ不織布は、製造にコストがかかるなどの問題がありますが、日本でもヨーロッパのようにコンポストが家庭で多く使用されるようになれば、用途の幅はさらに広がると考えています。

生分解性を持つ不織布の開発は、社会課題の解決の一端を担う分野であると考えているため、今後も開発を継続していく予定です。

また、環境負荷の低い不織布製品の開発に共感して下さる企業様も多くいらっしゃるため、そのような企業様と一緒に力を合わせて今後もより良い商品を生み出していきたいと思います。

自動車用資材から土木資材まで!「不織布」はマルヰ産業におまかせ!

自動車用資材から土木資材まで!「不織布」はマルヰ産業におまかせ!

今回は、生分解性プラスチックの歴史についてお伝えしました。

マルヰ産業は、自動車部品から建設業界に至るまで、日本のものづくりを影で支える「不織布」専門の製造・加工メーカーです。

機能性を持たせた不織布の製造が可能ですので、疑問点やお困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。