
不織布は多くの製品に使用され、便利な素材として私たちの生活に欠かせません。しかし、その多くは再利用が難しいとされています。
本記事では、不織布の再利用方法について深掘りし、反毛や生分解性プラスチックを使った再生技術のほか、代表的な不織布製品の例を紹介します。
目次
不織布は再利用できる?

不織布とは、文字通り「織らない布」のことです。一般的な布は、細い繊維を束ねて一本の糸にし、それを縦糸と横糸で規則的に織り込んでいます。対して不織布は、繊維を一定方向、またはランダムに重ねて絡み合わせることで作られたものです。
このような構造によって、不織布には無数の小さな隙間を持つポーラス構造ができ、通気性や吸水性に優れたものになります。不織布は、通気性や吸水性を活かして、マスクや紙おむつなどの衛生用品、エアコンフィルターといった生活用品、さらには衣料用品や土木用品など、さまざまな用途で利用されています。
不織布の多くは、ポリエステルやポリプロピレンなどのプラスチックが原料です。しかし、資源として再利用されることは少なく、多くの自治体では燃えるごみとして処理します。
不織布を再利用する方法としては、「反毛」によって再び不織布を製造する方法や、「生分解性プラスチック」を用いて堆肥として再利用する方法が挙げられるでしょう。次の章では、不織布の再利用の方法について深掘りして紹介します。
反毛技術による不織布の再利用

不織布を再利用する方法のひとつに、「反毛」と呼ばれる加工技術があります。以下では、マルヰ産業で積極的に取り組んでいる反毛について紹介します。
反毛とは
反毛とは、不要になった繊維製品や端材を細かくほぐし、ファイバー状の「反毛繊維」に戻すことです。反毛によってできた反毛繊維を再利用し、新たな不織布の原料とすることで資源の有効活用が可能となります。
マルヰ産業では、フェルトの不織布を解繊し、反毛繊維として再生する技術に力を入れています。主に反毛の対象となるのは、ポリエステル繊維で作られた不織布の端材やNG反(品質基準に満たない製品)です。このような不織布を廃棄するのではなく、反毛機にかけて綿状に戻し、土木工事で使用する不織布に混ぜて再利用する取り組みを行っています。
関連記事:反毛とは?その意味や反毛の歴史、反毛繊維の製品例まとめ
反毛繊維を活用した製品例
反毛技術によって繊維となった反毛繊維は、さまざまな製品に再利用されています。主な製品例として挙げられるのは、「吸出し防止材」「自動車の防音材」です。
吸出し防止材とは、護岸工事で使用されるシート状の製品で、土砂の吸出しや洗掘を防ぐものです。特に河川の護岸工事で活躍し、大雨や洪水による地盤の浸食を防ぎます。マルヰ産業では、月に20~40tほど反毛繊維を吸出し防止材に再利用しており、環境負荷の低減と地盤保護の両面で貢献しています。
また、反毛繊維を自動車の防音材として活用する場合は、エンジン音や外部の騒音を遮断するために、フェルト状に加工されることが一般的です。車両の内装や床下、エンジンルームなどに使用されていることが多いでしょう。
その他、反毛繊維は衣服への活用も進められていますが、現状では実験的な段階です。反毛繊維は繊維長が短く、均一ではありません。そのまま生地にするのは難しいものの、オーガニックコットンなどの他の素材と組み合わせることで、衣服への実用化が進められています。耐久性や肌触りに配慮しつつ、リサイクル素材を活用する試みが行われており、今後の展開が期待されています。
生分解性プラスチックを活用した不織布の再利用
先述した通り、現在流通している不織布の多くは、ポリエステルやポリプロピレンなどのプラスチックで作られています。プラスチックは自然界で分解されるには時間がかかり、土にかえるのが難しいといわれる素材です。
しかし、以下のような生分解性プラスチックで作られた不織布は、時間の経過とともに土にかえることができます。
- PLA(ポリ乳酸)
- PHA (ポリヒドロキシアルカン酸)
- バイオPBS(ポリブチレンサクシネート)
- PHBH(ポリヒドロキシ酪酸エステル)
上記の生分解性プラスチックは、微生物の働きによって最終的に水(H2O)と二酸化炭素(CO2)に分解され、環境中に有害な物質を残しません。生分解性プラスチックの不織布は、堆肥化プロセスに適している場合があり、堆肥として再利用することが可能です。また、従来の合成繊維の不織布と比較すると、処分時の環境負荷を大幅に軽減できる点が注目されています。
ただし、原料価格が高く、短期間での完全分解は難しいという課題が残ります。それでも、焼却処分の必要がなくなることでCO2の排出削減に貢献できる点は、環境負荷を低減する上で重要なポイントといえるでしょう。
関連記事:不織布は土にかえる?土に分解されるまでの経過や用途について
代表的な不織布製品

不織布は医療や衛生用品をはじめ、業務用資材や包装材など幅広い分野で使用されています。一般的な不織布は再利用が難しいものの、その利便性から私たちの生活に欠かせない存在です。ここでは、不織布製品の代表例を紹介します。
マスク
不織布は通気性がありながら、微細な粒子をキャッチするフィルター機能も備えているため、マスクの素材として広く活用されています。
不織布マスクは、花粉やホコリ、空気中の飛沫が体内に侵入するのを防ぐだけでなく、咳やくしゃみによる飛沫の拡散を抑える効果があります。そのため、日常生活での感染症対策として欠かせない存在です。
特に医療現場では、不織布を使用した医療用マスクが多く採用されています。
タオル
不織布は、キッチンタオルや使い捨てタオルなどに広く使用されています。特にフードコートや飲食店で使用されているふきんは不織布製のものが多く、手軽に使える点が特徴です。
また、速乾性に優れた不織布であれば、使い捨てではなく洗って再利用できます。さらに、油汚れの拭き取りにも適しており、キッチンでの使用に便利です。
なかでもレーヨンを使用した不織布は吸水性が高く、水分を拭き取るのに適しています。柔らかい質感を持ちながらも丈夫で破れにくく、料理や掃除の際に役立つでしょう。
バッグ
不織布で作られたバッグは、紙袋と比べて丈夫で繰り返し使用できるのが特徴です。紙袋は水に濡れると破れやすく、強く引っ張ると簡単に破れてしまいますが、不織布バッグは耐久性に優れており、ちょっとした荷物を運ぶ際にも安心です。
最近では、環境への配慮やコスト面を考慮し、ショップバッグとして採用する企業も増えています。紙袋は使用後にボロボロになりやすく再利用が難しい一方、不織布バッグなら繰り返し使っても破れにくく、簡易的なエコバッグとしても活用できます。
自動車用資材から土木資材まで!「不織布」はマルヰ産業におまかせ!

今回は、不織布の再利用方法について紹介しました。マルヰ産業は、自動車部品から建設業界に至るまで、日本のものづくりを影で支える「不織布」専門の製造・加工メーカーです。
当社では、製品の用途に合わせて機能性を持たせた不織布の製造が可能です。また、工場内で発生する不織布の端材をウエスとして再利用するなど、環境に配慮した取り組みを実施。さらに、不要になった不織布をファイバー状態に戻す「反毛」加工に力を入れ、繊維として再利用する方法を推進しております。
繰り返し使用できる耐久性や、必要なサイズに簡単にカットできる特性を活かし、不織布は今後さらに多くの分野での活用が期待されています。
不織布に関する疑問やお困りごとがあれば、お気軽にご相談ください。マルヰ産業が、ニーズに最適な不織布製品を提供いたします。