
人工皮革は、天然皮革の質感を再現しつつ、軽さやメンテナンスのしやすさといった独自のメリットを持つ素材です。銀面タイプとスエードタイプの2種類があり、それぞれ用途に応じた特性があります。本記事では、人工皮革をはじめとした革の種類や特徴について詳しく解説します。
目次
革の種類
革は、種類によって質感や特性が大きく異なります。天然皮革は独特の風合いや耐久性が魅力ですが、近年では人工皮革や合成皮革など、用途に応じた多様な選択肢が登場しています。それぞれの素材が持つ特徴を理解することで、目的に合った革製品を選べるでしょう。
以下では、代表的な革の種類について詳しく紹介します。
人工皮革
人工皮革は、天然皮革の質感や外観を再現した合成素材で、プラスチックや合成繊維から作られているものが一般的です。近年では技術向上によって、より本革に近い風合いや手触りを実現しており、手袋や財布、ジャケットなど幅広い製品に使用されています。
人工皮革が天然皮革に近い風合いを持つのは、その構造が天然皮革の特徴を忠実に再現しているためです。天然皮革は、表皮部分に近い「銀面層」と、その下にある「コラーゲン層」から構成されており、このコラーゲン層によって滑らかで上質な質感を生み出しています。
人工皮革は、このような天然皮革の構造を再現するために、表面にポリウレタン樹脂を用いた「表面樹脂層」を形成し、内部には極細のナイロンやポリエステル繊維を絡み合わせた「不織布層」を採用。そして不織布層にポリウレタン樹脂を浸透させることで、天然皮革に近い柔軟性と質感を実現しています。
また、人工皮革は天然皮革に比べて軽量である点もメリットのひとつです。不織布の特性を活かした構造によって、本革のような高級感を持ちながら、扱いやすさや耐久性にも優れています。
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合成皮革
合成皮革は、布地をベースにその上から合成樹脂を塗り、表面のみを天然皮革に似せた人工素材で、いわゆる「ビニール製」や「プラスチック製」の革のことを指します。
使用される合成樹脂にはポリ塩化ビニール(PVC)やポリウレタン(PU)があり、表面に樹脂を塗布した後、型押しをすることで、天然皮革のような風合いを再現しています。
合成皮革は見た目こそ本革に近いものの、革特有の香りや手触りを完全に再現することはできません。本革が使い込むほどに風合いが変化し、味わいが深まるのに対し、合成皮革は時間が経つと表面の樹脂が劣化し、剥がれやひび割れが発生しやすいという特徴があります。そのため、長期間使用するアイテムには不向きだといえるでしょう。
合成皮革は「合皮」や「フェイクレザー」とも呼ばれ、さまざまな用途で活用されています。ソファや車・バイクのシート、バッグなど、日常生活のなかでも目にする機会が多い素材です。
天然皮革
天然皮革は、動物の皮を「なめし」という加工を施して作られる素材です。「なめし」とは、動物の皮から、腐敗を引き起こすたんぱく質や脂肪を取り除き、薬品を用いて柔軟で耐久性のある素材に変える加工方法のことを指します。
天然皮革は「革」「皮革」「本革」とも呼ばれており、使い込むほどに味わいが増すのが特徴です。天然皮革の製品は高級バッグや靴、財布など、さまざまな分野で使用されています。
なお、国際標準化機構の国際規格(ISO規格)によると、天然皮革を「オリジナルの線維構造を多少とも元のまま持ち、腐らないようになめした皮革」と定義しています。機械的または化学的に粉砕し、繊維状・粒状・小片・粉末にしたものをシート状などに固めた素材は、天然皮革とはみなされません。たとえば、革を削った際に出る粉状の革屑を樹脂で固めた「再生革」は天然皮革に該当せず、国際タンナーズ協会では「ボンデッドレザーファイバー」と呼んでいます。
再生革は、革の端材を有効活用できるという点で環境に配慮した素材ですが、天然皮革と同じ品質や耐久性を持っているわけではありません。そのため、再生革を「本革」として販売することは誤解を招く表現とされています。天然皮革を選ぶ際には、こうした違いを理解し、本物の革の特性を正しく見極めることが大切です。
人工皮革の種類

人工皮革の種類は、主に銀面タイプとスエードタイプの2種類です。それぞれの特徴について詳しく紹介します。
銀面タイプ
銀面タイプの人工皮革は、表面に光沢があり、耐久性が求められる製品に多く使用されています。代表的な用途として挙げられるのは、ランドセルや靴です。
ランドセルは、小学生が最長6年間使用するアイテムであり、軽さと耐久性が重要視されます。本革に比べて軽量で水や汚れに強く、お手入れが簡単な人工皮革は、ランドセルの素材として最適です。
近年では、ランドセルの収納力の向上やカラーバリエーションの多様化が進み、こうしたニーズに応える素材として人工皮革が採用されることが増えています。加工のしやすさや豊富な色展開といった人工皮革の特徴が、今後のランドセル市場でますます活かされることでしょう。
靴もまた、耐久性が求められる分野のひとつです。特に長時間使用する普段履きの靴は、履き心地の良さや、足に馴染む質感が重要になります。人工皮革の軽量で水や汚れに強い特性から、日常使いに適しているでしょう。
また近年では、一般的な靴だけでなく、スポーツシューズにも人工皮革が採用されています。スポーツシューズは、激しい動きに耐えられる強度や、競技者のパフォーマンスを向上させる軽量性、フィット感が重要です。
こうした要件を満たす素材として、人工皮革が使われています。また、スポーツシューズのデザインやカラーバリエーションの多様化も、人工皮革の普及を後押しする要因のひとつです。
スエードタイプ
表面を起毛させたスエードタイプの人工皮革は、衣料品や家具、車のシートなど、さまざまな用途で活用されています。
たとえば衣料品の場合、ジャケットやコートなどに多く採用されています。天然皮革のスエードと比べて軽量で、水や汚れに強く、日常使いしやすいのが魅力です。また、人工皮革は染色しやすく、カラーバリエーションが豊富に展開できることから、デザインの自由度が高いというメリットがあります。さらに、近年はストレッチ性を持たせた人工皮革が開発され、より動きやすく、快適に着られる素材として進化しています。
もうひとつの主力用途が、自動車用シートです。高級感や快適性が求められる車の内装として、スエードタイプの人工皮革が活用されています。さらに、人工皮革の新たな用途開拓も進んでおり、その一例が産業資材分野です。たとえば、CDプレーヤーのディスク挿入口にある「CDカーテン」に、スエードタイプの人工皮革が使用されています。
このように人工皮革としての形状にとらわれず、製造技術を活かした新たな活用法が模索されています。今後も、機能性とデザイン性を兼ね備えた人工皮革の可能性は、ますます広がっていくと考えられるでしょう。
合成皮革の種類

合成皮革の種類には、PVC(ポリ塩化ビニール)とPU(ポリウレタン)があります。それぞれの特徴について詳しく紹介します。
PVC(ポリ塩化ビニール)
PVC(ポリ塩化ビニール)は、布地の表面に塩化ビニール樹脂を塗布した合成皮革で、「Polyvinyl Chloride」の略称です。比較的安価で手に入りますが、表面はPUより硬く、ツルツルとした肌触りになっています。
PVCは、耐久性の高さや汚れに対する強さが特徴で、カビが発生しにくい素材です。また、加工がしやすく、カラフルな色合いを実現できることから、ファッション性を重視した製品によく使われます。
しかし、PVCは通気性や柔軟性が低い点がデメリットです。PVCの革が使用されたソファなどに長時間座っていると、蒸れを感じることがあり、特に夏場や湿気が多い梅雨の時期には不快感を覚えることがあるでしょう。
さらに、長年使用すると表面が固くなり、経年劣化によってコーティングが割れることがあります。PVCはコスト面や機能面で優れていますが、快適さや長期的な耐久性を重視する場合は、他の素材と比較して選ぶことが重要です。
PU(ポリウレタン)
PU(ポリウレタン)は、布地の表面にポリウレタン樹脂を塗布した合成皮革です。「Polyurethane」の略称で、フェイクレザーとも呼ばれます。PUの最大の特徴は、柔らかくもちもちとした肌触りで、見た目と質感が天然皮革に近いことです。弾力性や柔軟性に優れ、やわらかなカーブがポイントとなるソファやクッションなどに適しています。
また、PUはPVCに比べると通気性があり、暑い季節でも快適に使用できます。さらに、撥水性が高く、天然皮革よりお手入れが簡単という点がメリットです。
ただし、PUはPVCよりも経年劣化に強いものの、本革と比べると耐久性には劣ります。特に湿度の高い場所で使用すると、加水分解と呼ばれる化学反応が起きて表面がボロボロになるケースがあり、注意が必要です。
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今回は、人工皮革をはじめとする革の種類についてお伝えしました。
人工皮革は合成皮革とは異なり、本物の本革のような質感を生み出しながら、さらに軽量である点が特徴です。不織布だからこそ生み出せる特性を持っている人工皮革は、不織布の可能性を強く示しているといえるでしょう。
マルヰ産業は、自動車部品から建設業界に至るまで、日本のものづくりを影で支える「不織布」専門の製造・加工メーカーです。機能性を持たせた不織布の製造が可能ですので、疑問点やお困りごとがありましたらお気軽にご相談ください。