廃棄される繊維や古着を再利用して作られる反毛フェルトは、地球環境に優しいだけでなく、機能性に富んだ素材として幅広く活用されています。
本記事では、反毛フェルトの基本情報から製造工程、用途の詳細までわかりやすく解説します。環境配慮型の製品をお探しの方は、ぜひご一読ください。
目次
反毛フェルトとは
反毛フェルトとは、不要になった糸・布や古着などの廃棄物からできた反毛繊維を加工して製造されたフェルトのことです。廃棄物を活用する反毛フェルトは、環境に優しいだけでなく、土木建築工事の資材などで幅広く活用されています。たとえば、河川護岸吸出防止材や分離材、地盤の保護マットなどが一例です。
反毛フェルトは再生資源を有効活用しながら、さまざまな現場のニーズに応えています。環境配慮と機能性を両立した素材だといえるでしょう。
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反毛フェルトの規格
反毛フェルトには日本産業規格(JIS)が定められています。反毛フェルトの種類は品質によって区分されており、以下の15種類です。
| 種類 | 種類の細分 | 内容 |
|---|---|---|
| 第1種 | 1号/2号/3号/4号/5号 | 素材を問わないもの |
| 第2種 | 1号/2号 | 動物性繊維を混用もの |
| 第3種 | 2号/3号/4号 | 合成繊維を主体としたもの |
| 第4種 | 1号/2号/3号/4号/5号 | 繊維組成を明示したもの |
なお、反毛フェルトの日本産業規格は、主に糸くずや織物などの反毛繊維を用いてニードルパンチしたフェルトを対象としており、ジュートフェルトは含まれません。ジュートフェルトは天然繊維のジュート麻を圧縮してフェルト状にした別のもので、特性が異なります。
反毛フェルトができる工程

反毛フェルトは、廃棄される繊維材料を再利用し、さまざまな加工を経て製造されたフェルトです。以下では、ニードルパンチ機を使った反毛フェルトの製造工程を紹介します。
- 原料となる繊維の廃棄物を分別する
- 分別したものを裁断する
- 反毛機によって綿状にする
- 原料を撹拌する
- 原料をシート状に加工してフェルトを製造する
1.原料となる繊維の廃棄物を分別する
反毛フェルトを製造するためには、まず原料となる反毛繊維を生産する必要があります。反毛繊維とは、不要になった繊維を綿状に戻したものです。
繊維の廃棄物は糸や紐、布など、さまざまな形で集められます。それぞれの素材を適切に活用するためには、色や種類ごとに分けなければなりません。最終的に生成される反毛繊維を特定の色に仕上げたい場合は、分別作業が品質を左右するといえるでしょう。
また、廃棄された衣類を原料とする場合、ボタンやファスナーといった付属品を取り除く必要があります。このような徹底した準備作業によって、反毛フェルトの品質が支えられています。
2.分別したものを裁断する
次は、分別したものを細かく裁断する工程です。裁断する際は専用の機械を使うことが一般的で、次の工程で綿状に加工しやすくするための準備を整えます。
なお、異なる種類の原料を混ぜる場合には、裁断の段階で混ぜることがあります。
3.反毛機によって綿状にする
裁断された原料は、反毛機にかけられて綿状に戻されます。反毛機には無数の針がついたローラーが備えられており、原料をひっかいてほぐすことで、ふんわりとした綿のような状態になります。
4.原料を撹拌する
次に、反毛フェルトの用途に合わせて原料を細かく計量して配合し、撹拌します。ギザギザの刃がついたシリンダーを使うことで、繊維をほぐしながら混ぜ合わせることが可能です。
5.原料をシート状に加工してフェルトを製造する
専用の機械を使用して、原料を薄いシート状に加工し、何層にも重ねていきます。最後に、シート状になった原料はニードルパンチ機によって接着され、1枚の反毛フェルトが完成します。
反毛フェルトの用途

反毛フェルトは、リサイクル素材を活用した環境に優しい特性が注目されており、幅広い分野で活用されています。以下では、反毛フェルトの用途を紹介します。
自動車内装材として使用
反毛フェルトは自動車内装材として活用されているケースがあり、防音材としての利用が代表的です。自動車内部では、エンジン音や走行音、さらに外部からの騒音などの遮断が必要とされるため、吸音性を持つ反毛フェルトが重宝されています。
自動車の防音材はエンジンルームや車両の床下といった、目に見えない部分に使用されることが一般的です。このような見た目のデザイン性より機能性が重視される部分には、リサイクル素材を活用した反毛フェルトが最適といえるでしょう。また、反毛フェルトの使用によって、コスト削減や環境への配慮といった利点を兼ね備えています。
河川の護岸工事で使用
反毛フェルトは、河川の護岸工事において重要な役割を果たします。その代表的な用途が「吸出し防止材」です。吸出し防止材は、水流の影響を受ける箇所に敷設され、地盤被害や洗掘を防ぐ目的で使用されます。特に、大雨や洪水時に地盤が浸食されやすい河川沿いで効果を発揮し、護岸の安定を支える重要な存在です。
マルヰ産業では、月に20〜40tの反毛繊維を吸出し防止材の製造に使用しており、護岸工事に活用しています。こうした反毛フェルトを利用した製品は、地盤の保護だけでなく、廃棄物を再利用することによる環境負荷の低減にも貢献しているといえるでしょう。
マルヰ産業の反毛フェルト技術

マルヰ産業では、反毛フェルトの開発に力を入れています。反毛フェルトはリサイクル素材を有効活用した環境に優しい製品ですが、反毛綿100%では十分な強度がでません。そこで私たちは、再生ポリエステル短繊維などを混ぜ、強度を向上させた反毛フェルトを生産しています。品質が良い反毛フェルトを生産するには、このような調合が欠かせません。
また、反毛を解繊するカード機には、ガーネット機やフリース機があります。マルヰ産業ではその両方を備えており、さらにはエアレイという幅広く加工できる設備を保有。用途に応じた反毛フェルトを生産しています。
私たちは、反毛フェルトの可能性をさらに追求して技術を磨き、環境に配慮した持続可能な製品の開発に挑戦し続けます。
自動車用資材から土木資材まで!「不織布」はマルヰ産業におまかせ!

今回は、幅広い用途で活用される反毛フェルトについてお伝えしました。マルヰ産業は、自動車部品から建設業界に至るまで、日本のものづくりを影で支える「不織布」専門の製造・加工メーカーです。
当社の反毛フェルトは、反毛綿と再生ポリエステル短繊維などを調合することで、強度と品質を兼ね備えた製品を実現しています。また、製造設備にはガーネット機やフリース機に加え、幅広い加工を可能にする最新設備のエアレイを導入。さまざまな用途に対応した反毛フェルトの生産が可能です。
さらに、河川の護岸工事や産業廃棄物処理場で使用されるフェルトを、岩手県奥州市にて生産しています。東北で反毛フェルトを製造しているのは、岩手県奥州市のみです。
私たちは、反毛を使用したフェルトの可能性をさらに追求し、常に新しい価値を提供していきたいと考えています。製品に関する疑問点やお困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。